碩学が語る歴史の魅力 礪波 護先生
2017年 05月 09日 (火) 10:37 | 編集
プロフィール:一九三七年大阪府生まれ。京都大学名誉教授。著書に『隋唐佛教文物史論考』(法藏館)など多数。

碩学が語る歴史の魅力

 三国志や水滸伝、そして李白や杜甫といった詩人の遺した漢詩は、私たち日本人にもなじみが深い。そして何より、中国の歴史は壮大な世界観に満ちている。その中国の歴史=東洋史を長年研究されてきた礪波護先生に、歴史の魅力についてうかがってみた。

理数系学生からのスタート

 礪波先生は東大阪市にある大谷派寺院のご出身だ。幼少の頃より中国の歴史に親しんでこられたのかと思いきや、元々理数系の学生として過ごしてこられたのだという。「高校時分、日本史と世界史の先生が京都大学出身で、その授業が大変面白かったのがきっかけですね。後、大学に入って専攻を決める時に、東洋史を選んだのもその影響があったでしょう。卒業したら高校の先生になろうと思っていましたが、指導教官の勧めもあって、大学院に進学してからは本格的に取り組みました」。先生はお寺のご出身ということもあり、東洋史を学びつつ、次第に関心は仏教史にも移っていったようだ。しかし、当時の指導教官にはこう言われたという。「仏教は面白いテーマだから、一度のめり込むと周りの題材がつまらなく見えてしまうから、後にとっておきなさい」と。東洋史・仏教史の奥深さをうかがわせるエピソードだ。
 ところで礪波先生のお父様は、布教使の傍ら、大阪教務所長や難波別院輪番などの要職を歴任され、常々「自分が学んだことは、後の学生や若い人にもきちんと教え伝えていくように」とおっしゃっていたという。研究者の道に進んでからも、東洋史という学問を、大学の中に閉じこめておくのではなく、一般の人々に広くを伝えていくことを心がけてこられ、高度な専門書とともに、多くの叢書や文庫本などでも東洋史の尽きない魅力を綴ってこられた。昨年九月に刊行された『敦煌から奈良・京都へ』(法藏館)も、シルクロードから日本へ伝わってきた文化や、東洋史研究の裏話など、歴史の魅力が縦横に語られており、一般書店での評判も上々だ。

歴史の魅力とは

 これまで、数多くの知見を公表されてきた礪波先生にとって、歴史学の魅力とは、どこにあるのだろうか。「文学や哲学など、人間の営みを追究する学問は、総じて歴史的なものです。その時代ごとに、私たちの先輩がどういう考え方をし、行動をとってきたのかを知ろうとする時、やはり歴史に謙虚に学ぶしかないように思います。過去に思いを寄せることで得られる教訓は、現在の私たちが生きる上でも意義があるのではないでしょうか」。現代の日中関係は、政治的には決して穏やかとは言い難い状況だが、こういう時こそ、歴史を長い目で見直すことが大切なのだろう。『敦煌から奈良・京都へ』で綴られた壮大な歴史秘話にゆっくりと思いを馳せてみたい。

礪波護先生写真
礪波先生のご趣味は古本屋めぐりとのこと。長年の経験と勘で「珍しい本をだいぶ集めましたねぇ」。(法藏館編集部にて)
142『ひとりふたり‥』 2017 春彼岸号「著者に会いたい」に掲載
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