常に原典を尋ねて 藤田 宏達先生
2015年 09月 08日 (火) 17:21 | 編集
プロフィール:藤田 宏達(ふじた・こうたつ) 一九二八年北海道生まれ。北海道大学・札幌大谷大学短期大学部名誉教授。真宗大谷派北海道教区報徳寺住職。
ご著書:『梵文無量寿経・梵文阿弥陀経』、『新訂 梵文和訳 無量寿経・阿弥陀経

 私たちがよく耳にする『無量寿経』や『阿弥陀経』は、どのようにして日本にもたらされ、そして今日まで伝えられてきたのだろうか。藤田宏達先生は、これらの経典を半世紀以上にわたり研究されてきた斯界の第一人者だが、「常に原典を尋ねる」ことを、何よりも大切にされてきた。

アメリカで浄土教に出会う?

 藤田先生が浄土教研究を志すきっかけとなったのは、留学先のアメリカ(ハーバード大学)にあったそうだ。「私は十代に父母を失ったので、大学(東大印度哲学科)を卒業したら、自坊に戻るつもりでした。でも主任教授の宮本正尊先生のお薦めによって、結局大学に戻ったのです。当時は辻直四郎・花山信勝・中村元先生など、第一級の錚々たる学者がおられました」。これらの先達に導かれ原始仏教の研究に着手した先生は、昭和三十五年(一九六〇)にアメリカへ二年間留学を果たす。「アメリカでは仏教といえば、鈴木大拙先生の影響もあって、禅に対する関心が強く、浄土教は本格的な研究がなされていませんでした。そこに違和感を感じたことが取り組んだきっかけですね」。そこからの先生の熱意がすごい。関係史料・原典を徹底的に収集し、帰国後の一九七〇年に岩波書店から『原始浄土思想の研究』を公刊、それが日本学士院賞・仏教伝道文化賞の受賞となった。さらに『浄土三部経の研究』の刊行に結実。浄土教研究の専門家として、国の内外に広く知られるようになった。法藏館では二〇一一年に『梵文無量寿経・梵文阿弥陀経』を出版し、さらにその校訂本にもとづいて、今年の五月には『新訂 梵文和訳無量寿経・阿弥陀経』を刊行された。「親鸞聖人の九十歳まであと二年半、もう一冊、原始仏教に関する本を出すのが目標です!」驚くべき盛んな研究意欲である。

原典を忠実に読んで見えてくるもの

 藤田先生は原典研究を行う際、常に大切にしていることがある。それは「経典を可能な限り忠実に読むこと」なのだそうだ。「お経というのは、そもそも口頭や筆写によって伝えられてきました。だから、『無量寿経』『阿弥陀経』も様々な写本が伝えられており、それぞれの伝承を広く参照して丁寧に読んでいくのが大事です。親鸞聖人も『教行信証』で、多くの漢訳異本や経論を参照・引用して自釈を述べられています。今日でいう文献学的な手法をとられていたのですね。この点、現代の真宗学においても、親鸞聖人の経典の学び方・手法について、もっと習うべきところがあるように思います。いずれにしても、原始仏教や『無量寿経』『阿弥陀経』の文献学的解明は、真宗のみならず日本仏教の鍵を解く上でも、重要なテーマなのです」。
 私たちは、とかく流行しているものになびきがちだ。そうした中にあって本質的なものを見極め続ける作業は、大変な集中力や忍耐力を要することだろう。「原典を尋ねる」ことは決して楽な作業ではないかもしれないが、「仏教とは何か」を考える際には避けて通れない大きな課題であることが改めて分かった。

136『ひとりふたり‥』 2015 報恩講号「著者に会いたい」に掲載
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