大内典『仏教の声の技――悟りの身体性』、第34回田邉尚雄賞受賞!
2017年 05月 22日 (月) 10:18 | 編集
大内典先生の『仏教の声の技――悟りの身体性』(2016年3月刊、本体3500円+税)が、
このたび、東洋音楽学会の第34回田邉尚雄賞を受賞されました!
この賞は、東洋音楽学および民族音楽学研究において最も権威ある賞です。

2005年の「儀礼の力」シンポジウムで、大内先生によるご発表をお聴きし、
声明を含む仏教の音を、宗教実践として捉える視点が、当時としてはかなり斬新で、
こんな音楽学の先生がいるんだ! と衝撃を受けました。
(そのご論考は、ルチア・ドルチェ/松本郁代編『儀礼の力――中世宗教の実践世界』、2010年収載)
もしも、博士論文をご執筆されたら、ぜひ、出版を検討させて欲しいとお伝えしたところ、
最初のお声がけから約10年後のこと。
編集部に、「博論出しましたよ」とお電話いただいた時は、
本当に、嬉しかったのを覚えています。
音楽学研究では決して正統とはいえない研究内容だと伺っていましたが、
編集の立場からすれば、思想史研究、宗教学研究、文学研究など、
儀礼学に関わる他分野に反響を呼ぶ、とても面白い研究です。
学会ではすぐに評価が得られないかもしれないとは思っていましたが、
こんなに早く、かつ、正統にかつ的確に評価を得られるとは!

「正統ではない」という研究こそ、風穴を開けていくのかも知れません。
こういう本に出会えるから、この仕事は辞められません。
この受賞は、大内先生の柔軟で豊かな感性と、たゆまぬ探究心の結実です。
心から敬意を表し、そして心からお慶び申し上げたいと存じます!

編集T

【第34回田邉尚雄賞 受賞理由】
本書は、平安中期から中世にかけて日本天台の諸活動から生まれた声の技に着目し、教理および儀礼において人間の声と聴覚体験に期待された機能を明らかにするものである。とりわけ「悟り」の変容を「声」を切り口にして論じ、仏教が日本に定着する過程で儀礼実践が引き起こす感覚的身体的効果が活用され、仏智獲得における身体の役割を天台と鎌倉仏教が認識していたことが明らかにされる。分析対象は多岐に渡り、多様な文献に加え民族誌的情報も活用されている。儀礼や声の技の実践については「パフォーマティブ(行為遂行的)」な分析が用いられ、仏教研究における声や音への注目の重要性が指摘される。このように、本書は、仏教学、歴史学、音楽学等の複数の領域から対象にアプローチし、宗教と音あるいは身体的実践との深い関係性に切り込み、宗教音楽研究に新たな地平を切り開くものである。また、論理性や方法論的にも新規性が高く、非常に優れた研究であると評価された。(東洋音楽会「会報」第100号より)



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