波乱を乗り越え書き上げた大著   大塚靈雲先生
2013年 12月 01日 (日) 23:39 | 編集
大塚靈雲(おおつか・りょううん)
【プロフール】一九五一年滋賀県生まれ。浄土宗西山禅林寺派西光寺住職。大塚靈雲先生ご著書リスト

今年の七月に『選択本願念仏集私講』を出版された大塚靈雲先生は、浄土宗西山禅林寺派という宗派の僧侶だ。法然の著作『選択本願念仏集』を、一九九八年から一年間にわたり本山永観堂禅林寺で講義したものをまとめた。「どんなことがあっても形にしたい」と意気込んで執筆に臨まれたが、そこに至るまでには様々な波乱があった――。

「苦学と激務の日々の中で」

大塚先生は滋賀県の浄土宗西山派寺院に生まれ、十二歳で姫路市の西光寺に養子として入った。慣れない生活環境の中で、多感な時期を支えてくれたのは読書だった。先生が度々口にされる言葉へのこだわりは、この時期に培われたものだろう。苦学して進んだ龍谷大学では森英純師に私淑、十年間先生の寺へ通い詰めて善導大師の教学書を学び、仏教研究の下地となった。
 一九七四年、西光寺住職を継ぐこととなり大学を離れた。その後は三年間一日も休みが取れないほどの激務の日々、しかしその時期に発行し始めた寺報『西光』は、今も欠かすことなく独力で出されている。そのバイタリティには驚かされるが、「(文章を)書く材料は、生きている時に自然と与えられます。これほど幸せなことないですよ」と淡々と語られるのだった。

「独り占めせず」

 『選択本願念仏集私講』の完成には長い時間を要した。原稿は二〇一〇年からまとめ始めたが、その間に伽藍の整備や法事、そして大病による三度の手術・療養に見舞われ、執筆が長く中断することもあった。また、西山派の僧侶による『選択本願念仏集』をまとめた本は、明治以降記録にないこともあり、本書は非常に長い時を経ての刊行となったのだった。「本を出したらどういう読まれ方をするのか、やはり反応が気になりますね。そういう緊張はあるけれども、出版したことによって、周囲にも自分にも変化が生まれるような気がします。それと、病気をしたことで一日一日を本当に大切にしたい思いが強くなりました。生きている間に少しでも文章を書き残しておきたいですね」。
 ちなみに先生の趣味は、和歌を詠むこと。僧侶として、教学者として、歌人として、いつでもその求めに応じられるように、いずれも日頃から研究を深めておきたいという。生かされているときを愛おしく思うからこそ、浮かんだ言葉も惜しみなく紡ぎ出す。先生が「私の生き方そのもの」と語る「独り占めせず」という座右の銘が、穏やかな笑顔に染み込んでいた。
(写真:寺報から論文に至るまで、たくさんの言葉を紡いできた自坊書斎にて。)

129『ひとりふたり‥』 2014 正月号「著者に会いたい」に掲載

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